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新政権と道州制基本法案の提出

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年1月28日

東京大学名誉教授  大森 彌(第2827号・平成25年1月28日)

2012年暮れ、民主党の「壊滅的な惨敗」によって、また政権交代となった。復帰した自公政権の新藤義孝総務大臣は、道州制の特命担当大臣も兼ねる。新藤大臣は、 就任の記者会見で、道州制の是非を問われ、「道州制そのものは、私自身も大きな方向として必要だと思っている。地方分権、効率化において、道州制による地域単位の 適切な行政が行われるようになり、それを束ねた形で国全体がマクロ経済、外交防衛を見ていくという形が望ましい方向と思う」とし、「進め方として道州制基本法案は次の 通常国会に提出する考えはあるのか」と問われ、「準備ができれば提出できるが、与党内の考えを踏まえてさらに議論を深めねばならない問題だ。準備が整えば法律を出したい ことには変わりないが、時期は煮詰まり方によると思う」と語っている。 

総選挙での自民党の政権公約は「道州制基本法を早期に制定し、その後、5年以内に道州制の導入を目指します」であったから、新大臣の発言は、ほぼこれに沿っている。 その道州制基本法案は公明党との協議を経てまとめられたものである。 

しかし、「準備が整えば」とは、与党内だけの話ではない。知事の中にも反対論者はいる。2012年全国町村長大会は「道州制の導入は絶対反対」を掲げ、特別決議では、 「道州制は地方分権の名を借りた新たな集権体制を生み出すものであり、また、税源が豊かで社会基盤が整っている大都市圏へのさらなる集中を招き、地域間格差は一層 拡大することが考えられる。道州における中心部と周縁部の格差も拡がり、道州と住民の距離が遠くなって、住民自治が埋没する懸念さえある」と指摘している。 

小規模市町村の大合併を必ず伴う道州制の基本法案提出の前に必ず「国と地方の協議の場」で、自治体側とじっくりと協議すべきである。それなしに最低限の「準備」も 整わないし、提出時期が「煮詰まる」などということはあり得ない。