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地域づくりコーディネーター

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年6月11日

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2603号・平成19年6月11日)

「地域づくりコーディネーター」なるものが話題になってきた。以前はまちづくりリーダーとかアドバイザーと呼ばれていた人材や機能を呼び変えているものだろう。呼び変えなくてはならない状況が生じ、新しいネーミングが必要となったのであろう。地域づくりの現場を観察してみればそうなった状況が理解できる。

つまりこれまでの地域づくりは、道路や施設を建設したり、農林業の基盤整備が中心であった。それを進めていくためには地元有力者に頼んだり、町村長を中心に役場が頑張れば何とかなった。強いリーダーシップの下に強引に牽引していく方法が功を奏してきた。

しかし地域の現場は大きく変化してきた。課題は道路や施設建設ではなく、より身近な地域社会レベルで発生するようになった。集落の消滅、極度な高齢化、鳥獣被害、突然の災害等、コミュニティの空洞化に繋がる課題が急浮上してきた。景観、環境、福祉・医療、教育等の分野でもコミュニティをベースにして緊急に課題解決が迫られている。

これらの新しいテーマは、地元有力者に丸投げするだけでは解決しない。解決のためには多様な専門的知識や技術が要求される。ここに「地域づくりコーディネーター」の必要性が生まれている。コーディネートとは「異なるものを繋ぎ合わせて、よりよく機能させること」である。地域内外の組織や人材を繋ぎ合わせ、専門的知識や技能を駆使して課題解決に立ち向かうコーディネーターが必要とされているのである。

3月の能登半島地震は輪島市、とくに旧門前町に大きな被害をもたらした。しかし一部を除いて復旧の進み方は随分と早いようである。地元からは能登支援のためにも、早く観光客に来て貰いたいとの要請が届く。こうした素早い復旧を支えているのが、石川県内の地域づくりコーディネーター諸氏である。Mさん、Tさん、Oさんなど、専門知識と技とネットワークをもった人たちの献身的な活躍が伝わってくる。

これからの地域再生にはこうしたコーディネーター的町村長や役場職員が必要とされる。と同時に、各町村独自の地域コーディネーターのネットワーク形成が不可欠であろう。