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90歳といわれて

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年10月16日

90歳といわれて

エッセイスト 山本 兼太郎 (第2577号・平成18年10月16日)

「めでたく60歳、還暦です。そして定年退職となりました」とB君がやって来た。家のローンは在職中のボーナスや退職金の一部で済ました。息子はすでに社会人で結婚もしていて、友人たちからは羨ましがられているという。そのうえ、息子夫婦が退職祝いだといって、人間ドックの経費を出してくれた。夫婦2人でドック入りをしたが、全く異常なし。この調子でいけば、90歳までは大丈夫と、にこにこ顔の担当医に、背中をポンと一つ叩かれて、ほっと安心して帰って来たそうだ。

ところがB君、それ以来「90歳までの長命」が気になって仕方がない。23歳で就職して、60歳の定年まで37年間を一生懸命働いた。それが90歳まで……と言われると、これから30年である。働いた年数に近い年月が老後ということになる。と思うと、不安になってきたというのである。

そこで以前に、米・英・独・日・韓の「老人と生活」についての意識調査について聞いたことがあるのを思い出した。調査では「老人にとって最も大切なものは何か」という問いに、5か国とも「家族・子供」だった。そこで、「2番目に大切なものは何か」との問いには、米の老人の場合は「信仰・宗教」だった。英・独では、いずれも「友人・仲間」だったが、日・韓の場合は「お金・財産」ということである。

B君に、この話をしてから、「B君だったら、この問いになんと答えるかね」と聞いてみた。「1番大切なもの」はやはり「家族・子供」だろうから、これは聞かないことにして、「B君にとって2番目に大切なものは何か、やはりお金・財産かね」と聞くと、しばらく考えてから「私の老後に大切なものは健康と生きがいです」と、言っていた。

若いころから読書好きのB君は、その後、図書館の仕事をボランティアで手伝っている。最近では「100歳までも元気でやりたいね」と言っているそうだ。