ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 炭火型地域づくりを目指そう

炭火型地域づくりを目指そう

印刷用ページを表示する 掲載日:2011年3月21日

農村工学研究所研究員 坂本 誠 (第2753号・平成23年3月21日)

地域づくりには、ガスバーナー型と、炭火型の2つのタイプがあるように思う。  

まず、ガスバーナー。ボンベさえ用意すればパッと火がつくが、ボンベの中身がなくなれば、火は消える。ボンベは自給できず、スーパーやホームセンターへ買いに走らねばならない。補助金ありきの間に合わせの計画にもとづく地域づくりにおいて、こうしたガスバーナー型が散見される。

一方の炭火。火をおこすまでに時間も労力もかかるが、なかなか消えない。消えたように見えても、くすぶり続けていて、ふっと吹けばまた燃え上がる。しかも、燃料は自給可能である。頑張り次第で、いつまでも燃やし続けることができる。

この炭火型地域づくりの典型例が、高知県津野町床鍋集落にある農村交流施設「森の巣箱」である。8年前に、廃校舎を改築し、宿泊施設・商店(「集落生協」)・居酒屋の機能を併せもつ施設として蘇らせた。町村週報でも何度か取り上げられたので、ご存じの方も少なくないだろう。

この取り組みから教えられることは多いが、本稿で特に注目したいのは、施設の改築プランを練るために、実に8年もの歳月をかけた点である。「このままでは集落が消滅する。活性化の取り組みをしたいから、力を貸してほしい」と、集落住民の有志3名が役場を訪ねたのは、1995年のこと。以降8年間、役場の職員が床鍋地区に通い詰め、住民と膝を突き合わせて話し合った。

最初から廃校の活用を俎上に載せたわけではない。河川や道路の清掃活動、街灯の整備など、まず自分たちでできることから実践に移し、機が熟したところで、廃校の活用策の検討に入った。「やろうと思えば、話し合いから構想策定、改築まで2年もあればできただろう。しかし、2年で片付けようとしたら、『集落生協』や『居酒屋』はできなかっただろう」と、集落に100回以上通い詰めた役場の高橋正光氏は述懐する。

炭火型地域づくりを実現するためには、ハードルも多い。行政の補助金にありがちな単年度主義、短期的な成果主義…など、ガスバーナー型を生む要因を1つ1つ乗り越えていく必要がある。しかし、乗り越えた先には、炭火でじっくりいぶされた、いぶし銀のような地域づくりが待っているはずだ。