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参院選での道州制に関する選挙公約

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年8月1日

東京大学名誉教授  大森 彌(第2968号・平成28年8月1日)

去る7月10日に行われた参院選は自民・公明の大勝利に終わった。この選挙での各党の選挙公約は道州制をどう扱っていたか。

自民党の「総合政策集2016 J.ファイル」の「道州制の導入に向けて」は、「道州は、従来の国家機能の一部を担い、国際競争力を持つ地域経営の主体として構築するとともに、基礎自治体は、 住民に身近な地方公共団体として、住民に直接関わる事務について自ら考え、自ら実践できる地域完結性を有する主体として構築します。このため、導入までの間は、地域の自主自立をめざし活力が発揮できるよう、 地方公共団体間での広域的な連携の取組みの後押しを図るため、広域連合の活用、道州制特区法の活用などを検討します。」としている。

道州制が「道州と基礎自治体によって構成される」としているのは変わりないが、「地域完結性を有する」という文言が入っているのは驚きである。

現在の自民党道州制推進本部は、「道州制推進基本法案(骨子案)」(平成26年4月2日版)を基に、党内議論を再開するとしている。実は、 2012年9月の段階の骨子案には「地域完結性を有する主体」とか、「市町村の区域を基礎として編成し」というように明らかに市町村合併を前提にしている文言があり、 全国町村会等からの批判を受けて削除・修文した経緯がある。4月2日版にもこの文言はない。それを選挙公約で復活させているのである。

現在の推進本部は、これからの活動の留意事項として「基礎自治体(市町村)の合併は、強制しない」としているが、「地域完結性を有する」という文言を選挙公約で復活させたことに関し納得できる説明がほしい。

公明党の選挙公約には道州制の記載は見られないが、公明党は自民党の「骨子案」に基本的に同調しており、推進法案の国会提出となれば共同歩調を取るだろう。民進党は、「政策集2016」で、 潰えたはずの「地域主権・地域主権改革」を再び掲げ、「基礎自治体の強化を図りつつ、道州制への移行をめざします。その際、それぞれの地域の選択を尊重します。」としている。 民進党が移行をめざすとする「道州制」はどういう内容のもので、「地域の選択」とはどういう意味か、市町村合併をせずに道州制への移行が可能なのか問い質したい。国会で憲法改正論議が行われる中で道州制がどう扱われるのか要注意である。