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地方交付税の「算定の簡素化」

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年10月2日

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2575号・平成18年10月2日)

小泉内閣最後の「骨太の方針2006」は、別紙の中で「地方財政」に関連して次の三点を指摘した。①地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与・国庫補助負担金の廃止・縮小等を図る。②交付税について、地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ、算定の簡素化を図る。③地方税について、国・地方の財政状況を踏まえつつ、交付税、補助金の見直しとあわせ、税源移譲を含めた税源配分の見直しを行うなど、一体的な検討を図る。

①は例えば新分権推進法制定の問題であり、③三位一体改革の継続問題である。財政難に悩む町村にとって②のゆくえが気になる。「財政運営に支障が生じないよう必要な措置」(事業費補正など)を行うのであるから、交付税の算定がそれほど変わるとは思えない。しかし、あえて「算定の簡素化」といっているのだから何か意図があるはずである。

基準財政需要額の算定が複雑で不透明であるのは国による関与や義務づけがあるからで、簡素化には、その見直しが先決である。総務大臣の「ビジョン懇」が「地方が自由に歳出を決定できる部分については、現行の複雑な交付税の算定基礎を抜本的に改め、誰にでもわかる簡便な算定基礎に順次変えていくべきである」とし、基準財政需要額の「地方が自由に歳出を決定できる部分」については「人口と面積を基本とする新型交付税の導入」を提言したのである。

本当に、この「部分」を特定できるだろうか。 しかも、①と③が進めば、「地方が自由に歳出を決定できない部分」が少なくなり、交付税の不交付団体が増え、地方交付税全体の財源保障機能は低下する。 

そのとき、農山村地域に位置し交付税依存度の高い市町村はどうなるのか、国と地方は協力してその見通しを早く示すべきである。「財政再建法制」も見直すのであれば、なおさらである。