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地方自治の政府形態の多様化

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年6月21日

千葉大学教授・東京大学名誉教授  大森 彌 (第2484号・平成16年6月21日)

三位一体の改革など分権改革のゆくえは定かではないが、憲法改正を伴うような大きな改革論議は盛んである。そのうち現行の二元的代表制の変更を検討すべきとする論議に注目しておきたい。自治体の首長と議会議員を別個に住民が直接選挙で選ぶというのが、わが国の地方自治においては憲法93条に規定された政府形態となっている。

93条は「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」とある。この規定にもかかわらず、憲法改正なしに、この首長の直接公選制を廃止できると主張する現職の市長もいなくもない。昭和27年に東京の特別区の区長が公選ではなくなったケースもあるが、これは東京都が市(基礎的自治体)であるという変則的な扱いの結果であって一般化できない。昭和49年に改めて区長公選制が復活している。憲法改正なしに首長の直接公選制は廃止できないというべきである。

憲法で自治体の首長も直接公選制としているのは国際的にはそう多くない。地方自治の政府形態として必ず全国一律に二元的代表制をとらなければないかどうかは検討されてもよい。欧州などに広く見られるような、直接公選の地方議会議員が執行機関(議長が首長になる)をかねる議会中心の政府形態も構想できる。二元的代表制に限らず、一元的代表制も選びうる制度に変えることも考えられる。もっと多様な政府形態のあり方をさぐってよいであろう。

その際、当然ながら、現行憲法が「地方公共団体には、法律の定めるところにより、議事機関として議会を設置する」とわざわざ規定しているように議会は不可欠である。議会は廃止して首長のみを直接に公選するような一元的代表制は認められないだろう。議会中心主義にして、なお行政管理の専門家が必要なら、そうした総括管理者を議会が採用できる仕組みを考えることはできる。しかし、憲法改正の前に改革すべきことが山ほどあるように思う。