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職員の降任・免職・任期制

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年6月26日

千葉大学教授・東京大学名誉教授 大森 彌 (第2320号・平成12年6月26日)

町村長から「首長になってみて、こんなに働かない職員が多いのか、と驚いている。どうも地公法に原因があるのではないか」と訊かれることがある。それも役場と職員の活性化に意欲をもつ首長であればあるほど、そう感じるらしい。地公法の原因があるというのは、どうやら、一度役場に入ってしまうと、地公法による強固な身分保障によって、よほどのことがない限り、降任も免職もないため、安心が高じて、安逸に陥ってしまっていることを指しているようである。

なるほど、地公法上は、一般の職員には任期制はないし、職員の意に反して降任又は免職にできるのは、①勤務実績が良くない場合、②心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合、③前②号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合、④職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員が生じた場合」に限られている。②は明白であれば、できる。③は職階制が徹底されていないから死文に近い。①と③には客観性と公平性に裏打ちされた職員評価が必要であり、昇任人事は「競争試験」ではなく「選考」で行い、しかも年功(年齢)序列が基本になり、能力・実績を重視した人事管理など行っていないから、ほとんど適用していないに等しい。しかも、降任もまして免職などとても気の毒だという人情論も強い。

しかし、地公法上は、首長等は「職員の執務について定期的に勤務成績を評定して、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない」ことになっている。問題は、この評定の制度と手法の技術革新であり、職員の意向を尊重した(希望制の)降任又は免職であり、さらに、定期的に公務員としての適格性を吟味し任用する仕組みである。分権時代はより厳正な職員評価を求めている。やがて任期制の導入も論議になろう。