ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 改正自治法の「地域における行政」

改正自治法の「地域における行政」

印刷用ページを表示する 掲載日:1999年10月18日

東京大学大学院総合文化研究科教授 大森 彌 (第2290号・平成11年10月18日)

いわゆる分権一括法による改正後の地方自治法(改正自治法)は、分権改革にふさわしくいくつかの新たな原則を打ち出している。その1つは、国と都道府県・市町村との間の役割分担という観点を取り入れ、「地域における行政」の実施は基本的に地方公共団体の役割であり、国はこの地方公共団体の役割を尊重し、地方公共団体との適切な役割分担に配慮しなければならない旨を定めたことである(1条の2第1項・第2項)。「住民に身近な行政はできるだけ地方公共団体にゆだねる」という言い方も出てくる。

これに照応させ、改正自治法は、地方公共団体が処理すべき事務についての従来の区分、すなわち、「その公共事務」・「法律又はこれに基づく政令により地方公共団体に属するもの」(いわゆる委任事務)・「その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないもの」という3区分を廃し、それに代えて「地方公共団体は、地域における事務・・・を処理する」(2条2項)という言い方もとっている。

自治体の基本的役割が「地域における行政」「住民に身近な行政」「地域における事務」にあるというのは当たり前のように見える。そうなのではあるが、このように自治法が規定した意義は大きいのである。「地域における行政」は地域的な性格を有する行政を担う主体が地域的な統治団体、すなわち地方政府であることを示し、「住民に身近な行政」は日常生活等に密接に関わりのある行政サービスを享受する住民の側から地方公共団体の行政を表現し、「地域における事務」は普通地方公共団体が一定に地域において幅広い事務処理権能を有していることを規定したものといえる。

これらの規定は自治体の役割の拡充・充実を図ろうとする意図から出ており、国は国でなければできない分野に精力を注ぎ、それ以外の分野への関わりは極力少なくしていくことを意味している。この基本原則を具体的な事務事業のレベルでどう生かし切るかが地方自治新時代の自治体の課題である。