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合併特例法の施行

印刷用ページを表示する 掲載日:1999年8月30日

東京大学大学院総合文化研究科教授 大森 彌 (第2284号・平成11年8月30日)

去る7月8日に成立した地方分権推進一括法には、地方公共団体の行財政能力の一層の向上を進めるための「市町村の合併の特例に関する法律」(平成15年度までの時限立法)が含まれている。公布日から施行され、8月6日に自治省は都道府県に「市町村合併の指針」を通知し、具体的な合併案を平成12年中に示すよう要請した。本腰を入れた推進の動きである。そこでは、合併後の人口規模を最低1万人以上にするよう求めているが、これは全市町村の47%にあたる。

今回の合併特例法は地方分権推進委員会の第12次勧告に基づいているが、合併は「地方政府単位の再編」という自治体の最も根本に関わる問題であるから、市町村や住民の理解が進み、自主的・主体的な判断により行われることが基本である。

しかし、市町村が自主的に合併をするのであれば国は相当の支援をすべきである。合併特例法には、住民発議制度の拡充、都道府県知事による合併協議会設置の勧告、普通交付税の算定の特例(合併算定替)の期間の延長、合併特例債の創設、地域審議会の設置、議員年金に関する特例等、合併推進の障害になるものを除こうとするだけでなく、むしろ積極的に推進するために現段階で考えられるほぼすべての方策が盛り込まれている。

すべての市町村は、必ずこの法律を吟味し自分たちの将来にかかわる合併問題を真剣に検討すべきである。合併は自主的であるはずだという理由で本格的な検討をしないままやり過ごせるような情勢にはない。このたびは、国地方を通じる危機的な財政状況を背景として、分権対応の必要性だけでなく、情報通信の発達・道路網の整備・日常生活圏の拡大の考慮、ゴミの焼却とダイオキシン問題への対応、介護保険制度の効率的な運用といった要請も合併促進の要因になり始めている。広域連合制度の活用による広域行政の推進と並んで市町村合併が進むものと思われる。明治、昭和に次ぐ平成の大合併の兆しである。