ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 平成十一年三月二六日

平成十一年三月二六日

印刷用ページを表示する 掲載日:1999年4月12日

東京大学大学院総合文化研究科教授 大森 彌 (第2268号・平成11年4月12日)

平成11(1999)年3月26日は、「今日は何の日」的な意味で、画期的日付となった、地方分権推進関係の一括法案と第2次地方分権推進計画が閣議決定されたからである。前者は、分権委の1次から4次までの韓国とそれに基づき閣議決定されていた「推進計画」がいよいよ法改正となって具体化されたもので、地方自治法をはじめとする475本の法律改正案である。この法案をの施行期日は原則として平成12年4月1日である。後者は分権委の第5次勧告を受けた計画決定であり、これに基づき政府部内で関係法令の改正準備に入る。これらによって、今次分権改革の実行案の全容が示されることになった。

まず、すべての自治体で、首長をはじめとして、改正地方自治法と説明文書を精読してほしい。機関委任事務制度の全面廃止に典型的に見られるように、国と都道府県と市町村の関係を、これまでのような上下・主従から対等・協力へと転換し、住民とその代表機関の自己決定権を拡充する内容となっている。

町村の現場に行ってみると、本音のところ、今次の分権改革についても、あなどっているか、もしくはいぶかっている人々に出会う。分権なんていっているが、どうせ自分たちの知らない中央で決めたことで、現実がそんなに簡単に変わるはずはない、というのが1つ。分権といって、これ以上面倒な仕事が増えるのはかなわない、自由に使える金だけくれればいい、というのがもう1つである。こういう意識を持っている人々が多い自治体は、時代の大きな変化についていかれないという意味で、急速に、その存在価値を失っていくだろう。そして、そういう自治体を、これからはだれも支援しないだろう。分権の時代は、意欲と力量の発揮という点で自治体の間で優勝劣敗が明確になる時代でもある。従来のような格差是正論に安住してもいられなくなる。分権の時代は、自治体にとって、それなりに厳しい自己管理の時代である。