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ボランティアで文化遺産の堰浚い

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年8月3日

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章 (第2928号・平成27年8月3日)

ゴールデンウィークに喜多方市の山間部(旧山都町)を訪れた。堰(水路)浚いをするためだ。

いうまでもないが、田んぼで稲を作るには水が欠かせない。ぼくの友人が移住した地区では毎年5月に共同作業で、冬の間に水路に溜まった落ち葉や土砂などを取り除き、 雪崩などで崩壊した法面を修復してきた。ところが、高齢化・過疎化が進み、水利組合のメンバーも減って、作業がだんだん困難になっていく。そこで2000年から彼が呼びかけて、 集まったボランティアでお手伝いしているのだ。  

水路は本木上堰といい、全長6キロ、高低差50メートル。1747年に完成し、地元住民で管理してきた、文化遺産である。午前中は崩壊部分の修復のために土を土嚢に詰めたり、重い塩ビ管を運んだり。 相当な重労働で、だんだん手がしびれてくる。午後はフォークで落ち葉などを浚い上げていく。今度はそんなにきつくない。しかも、やればやるだけ水路がきれいになるから、達成感があって楽しい。 休憩すれば新緑が目に飛び込んでくるし、小さな可憐な花も咲いていて、なんとも気持ちいい。午後3時ごろ、予定部分はすべて完了!

その後は温泉で汗を流し、地元の人たちとの交流会。最近の参加者は30~50人で、去年は過去最高の54人だったという。都市生活者にとっては、半分レジャー感覚で中山間地域へのプチ貢献ができる。 グリーンツーリズムを超えた、社会的意義のある取り組みと言えるだろう。  

ただし、堰の利用者すなわち稲作農家は、ピーク時の50軒(1969年)から11軒に激減した。不利な条件に加えて、販売価格は下がる一方なので当然だが、そこに歯止めをかけたいというのが友人たちの願いだ。 そのために、完全予約制で、通常手取り価格の3倍近い1俵2万4000円の「上堰米」や、古くから続く地元の造り酒屋に米を持ち込んで造る純米酒の販売に取り組んでいる。評判は上々だ。

こうしたコミュニティに根差した「小さな経済」を各地で創り出していくことが、本来の地方創生である。