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川はいのちのつながり

印刷用ページを表示する 掲載日:2012年7月9日

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章 (第2806号・平成24年07月9日) 

長野・岐阜・愛知・三重の四県を流れる木曽川の上流と下流の交流活動を行う「水源の里を守ろう 木曽川流域みん・みんの会」(略称みん・みんの会) が、「木曽川流域図―木曽川・飛騨川・愛知用水“水の旅”」を作成した。木曽川は長野県木祖村の鉢盛山を源流とし、伊勢湾に注ぐ。長さは229㎞で、 流域住民にさまざまな恵みをもたらしてきた。  

名古屋市の友人は「水が美味しい」と語る。それは、木曽川の水質の良さをまさに示しているだろう。事実、同じ愛知県内でも、 長良川水系の水を飲んでいる市町村とは味に大きな差があるようだ。   

このA1判の流域図を見ると、支流や取水している用水を含めて、上流と下流のつながりが一目でよくわかる。また、裏面には、伝承・歴史、自然・環境、 上流へのまなざしなどの項目で、沿川にまつわるエピソード、水と緑の恵みを育む農や森づくりの活動がコンパクトにまとめられている。   

この「みん・みんの会」は、今回のようないわば「まなざしの交流・共有」とともに、安全で環境を守り育てる生活材による「小さな経済」 を創り出してきた。水源に近い清流を活かしたミネラルウオーターや日本酒、木工製品などを下流域で販売しているのだ。加えて、販売価格の2~5%を基金として積み立て、 上流域の地域活動を支援する。補助金に頼らない自前の活動の意義を高く評価したい。   

さらに、昨年からは都市部の会員たちが木祖村で畑を借りて大豆を育て、木曽町の味噌屋さんで味噌を作った。今年は畑を広げて、 赤かぶやとうもろこしなども作り始めたという。都市住民の農力・自給力アップと上流域の耕作放棄地の減少を両立させる取り組みだ。これらをとおして、 木曽川流域住民総幸福度(Gross Kisogawa Happiness)を追求していくとよいだろう。それは、個人の主観的なものではない。 公正かつ環境を守り育てる社会の実現によって多くの人びとが幸福になっていくという意味である。