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人を結ぶギャラリーしろかわ

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年8月26日

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2409号・平成14年8月26日)

この夏休みの終わりに、家族で出掛ける格好の場所がある。愛媛県の山中、高知県境に近い城川町の「ギャラリーしろかわ」だ。この山中の小さな美術館には、全国から集まってきたかまぼこ板がひしめいている。それらの板は、丁寧な、しかも創意溢れる創作品のかたまりだ。練り上げられた構想のもとに絵を描いた作品、板を何枚も重ねて作り上げた工芸品のような作品、想像の全てを尽くした応募作品15,787点、全てが展示されている。応募者数は21,631人。使用されたかまぼこ板の枚数は31,065枚にのぼる。

0歳児の手形から、100歳を越えるお年寄りの丁寧な作品、素朴な児童の絵から漆を使用し蒔絵の技法を駆使したプロの作品、これらが同列に展示されている。今年の優秀賞は名古屋の作家の作品「釘抜き」だ。先が人間の指に変化したヤットコが、かまぼこ板に打ちつけられた釘を懸命に抜こうとしている、ユーモラスな作品だ。夏の盛りに城川町内で行われた表彰式の日曜日、ギャラリーは全国からの訪問者でごった返していた。優秀作品を見よう、応募の中から自分の作品、孫や子供の作品を探そうとする人達だ。

1995(平成7)年から始めた「全国かまぼこ板の絵展覧会」も、今年で8年目を迎えた。第1回の12,100人から応募者数は毎年増え続けている。全国各地、また国際的な展覧会の審査にも携わってきた経験を持つ、審査委員長の富永一朗さんは「地方の町村が主催する展覧会で5回続くのも珍しい。増してや毎年応募者数が右肩上がりで増えるのはもっと珍しい」という。

その原動力はギャラリーしろかわのスタッフだ。なかでもスタッフを束ねる浅野幸江さんの尽力が光る。毎年、作品を応募すると同時にギャラリーのスタッフに会いに来る人も多い。応募した仲間に逢いに来る。ギャラリーしろかわが、応募する人たちを繋ぐ、結び目になっている。