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風の丘

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年1月14日

法政大学教授 岡崎 昌之 (第2383号・平成14年1月14日)

盛岡や花巻から遠野に向かうと市街地に入る手前のバイパス沿いに、遠野ふるさと公社が経営する道の駅「風の丘」が建っている。一帯の地名が寒風だからこの名前がついた。年間100万人を越す人を集める東北でも有数の道の駅だ。施設内には遠野で取れた農産物はもちろん、地ビールやお酒、お菓子、乳製品などが所狭しと置かれている。レストランや休憩ホールも多くの人が利用し活気に溢れている。

注意をしてみるとこの道の駅にはさまざまな工夫がある。農産物を入れてある統一の竹カゴには、消費者に生産者の気持ちを伝えるため、作った人の顔写真とメッセージが小さく掲げてある。トイレの手洗い場には1日4回の掃除時間が表示してある。今、多少汚れていても、数時間後にはきれいになるという安心感を客に持たせるためだ。野の花もさりげなく飾ってある。猿ヶ石川を見下ろせるもっとも景色のいいところは、無料休憩ホールとして開放されている。ちょっとした打ち合わせ場所として、訪れた人が自由に使える。

「風の丘」の入り口付近には、5坪の「夢咲き茶屋」が建っている。そこでは「綾織に夢を咲かせる女性の会」が、16人のメンバーで、団子、そば、おにぎり、おでんを販売している。思い切って元の職場を辞め、地元で取れた素材を加工して、地元の施設で販売したいという女性たちの思いが実現したのだ。元気でにこやかに対応する女性たちに魅せられて、多くのひとが立ち寄る。当初の売上目標1,000万円をはるかに超えて、年間5,000万円を5坪で売り上げている。

「風の丘」を訪れる人たちに、いかに満足のいく場所と時間と産物を提供するか、これがこの施設経営の原点です、と立ち上げた遠野市役所の菊池新一さんは言う。農協からヘッドハンティングした支配人、産直部門担当の店長、レストランの料理人を始め、関係者が懸命に動いている。人が生き生きと働けば、施設も魅力あふれるものになる。