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地域運営組織と公民館

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年12月12日

明治大学教授 小田切 徳美(第2983号・平成28年12月12日)

地域運営組織への関心が高まっている。この間、筆者も農山村のこうした組織を多数訪ねているが、その過程で気がついたことがある。それは、地域運営組織の「先進地域」と公民館の活動が活発な地域が重なることである。例えば、山形県川西町、長野県飯田市や島根県雲南市などはその典型であろう。

それは、容易に予想されるように、公民館による人材育成が、地域運営組織の活動に貢献しているからだろう。しかし、その具体的な関連は必ずしも明らかでない。そこで、各地の実態を注意深く見てみると、「多様な世代」というキーワードが浮かび上がってくる。

農山村では、地域リーダーが男性の世帯主世代に偏ることが少なくない。しかも、彼らの世代交代が困難なため、高齢化が著しく進んでいることもしばしば見られる。それに対して、公民館活動の特徴は、そこが多様な世代の関わる場となっていることである。例えば、環境学習や食育活動を通じて、異なる世代の人々が一緒に学ぶケースが見られる。また、公民館自体の運営を多様な世代のリーダーが連携し、進めていることも多い。それは、公民館の任務のひとつが、住民同士を「結ぶ」ことにあり、むしろ当然のことなのであろう。

こうした公民館活動を経験した人々が、地域運営組織に関わることにより、一部では多様な世代により運営され、世代交代ができる組織となっている。それは、農山村の自治会・町内会とは対照的な姿とさえ言える。

とはいうものの、公民館と地域運営組織の関係には整理すべき課題がある。前述のような親和性から、建物としての公民館をコミュニティセンターにし、また制度としての公民館を廃止し、地域運営組織が指定管理をするセンターが社会教育を担う動きも見られる。そのため、公民館関係者から地域運営組織に対する警戒感も表明されている。

しかし、人材育成の重要性を考えると、どのような状況にあっても、公民館的な機能は地域に不可欠であることは間違いない。それを地域運営組織が行うならば、組織内に「社会教育部」を置くという明確な位置づけが欠かせない。また公民館と地域運営組織が併存する場合には、両者の緊密な連携が特に重要になる。

いずれにしても、地域運営組織への関心の高まりが、公民館やその機能の再評価につながることを期待したい。