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地域ぐるみの教育支援体制

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年3月18日

東京大学名誉教授 西川 治 (第2392号・平成14年3月18日)

この4月から週5日制と新学習指導要領に基づく教育が始まる。これによる学力の低下を心配する声が多い。それに加えて、ここでは社会科における2つの問題点を指摘し、それへの対策案を考えてみたい。

新学習指導要領では、従来よりも格段に児童の自主的学習を促し、自ら問題を見付けて、その解決に向けて、単に参考書に頼るだけでなく、むしろ現場での観察、当該機関・施設および当事者に面接ないしアンケートにより調べて、考えたり、話合いまとめて発表する、といった能力の育成に重点が置かれている。教科書も、主に文章による一方的な説明ではなく、イラストを多用したガイドブックのように変わった。

そこで第1の問題点は、教員が、どうしたら少しでも早く新学習指導要領に即して、しかも授業時間の減るなかで、校外での調査法を適切に指導できるようになれるか、である。たとえば、地形図や空中写真の判読、調査事項の地図的表現法にしても、教員資格取得に際してそれなりの実習経験をつんだ教員はきわめて少ないので、教員の研修が必要であるのに、実際どれほど実施されているのか、心許ない次第である。それに代わる応急策として、地理学の博士浪人や、専門的技能を持つ定年退職者などを非常勤の総合学習補助教員として採用したり、ボランティアの協力を求めるなどの行政的措置と配慮を切望したい。

第2の問題点は、児童たちが教科書の事例に習って、まちづくり、ごみ処理、福祉などなど、直接市町村長をはじめ、役場や各種の機関・施設などの業務担当者に電話で問い合わせたり、面接ないしアンケートする頻度が高まり、その対応が行政側の負担になることである。また文化財や天然記念物などを見学する機会が急増して、その管理に手を焼く事態も生じるに違いない。学校ではそうした場合に守るべきマナーの教育が大切だが、週休2日制にともなう地域ぐるみの教育支援体制作りも必要であろう。