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島嶼間の国際巡航母船

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年5月15日

東京大学名誉教授 西川 治 (第2314号・平成12年5月15日)

人はパンのみにて生くるにあらず、されど情報だけでは飢えを救えず、“剰報”は欲求不満を掻き立て、仮想現実は貧脳を暴挙に駆り立てる。

第2回太平洋・島サミットの「宮崎宣言」には、太平洋諸国が情報技術革命の恩恵を等しく受けることができるように、との提言も含められた。たしかに情報インフラの整備や人材の育成は必要であるが、何よりも物流の発展と医療福祉の向上、環境保全対策も重要である。南太平洋フォーラム加盟16か国に対する経済援助には、きめこまかな配慮が望まれる。わが国における離島振興法(1953年公布)に基づいた開発実績や、各界の調査研究から得られた知慧やノウハウも有効に活用すべきである。

学生時代から半世紀にわたり、島の研究や離島振興に献身してきた山階芳正氏は、一昨年7月、念願の日本島嶼学会を設立、その会長に就任し、国際島嶼学会との交流にも尽力されている。

去る4月8日・9日、2000年次八丈島研究大会において、筆者は基調講演の結びで2、3の夢を披露した。その1つは、日本と世界の島嶼国との二国間交流公館を、それぞれの国と人口数がほぼ等しい日本の離島に政府の出資で設置すること。

他の1つは、航空母艦ならず、捕鯨母船にならって数万トン規模の国際島嶼間巡航母船の建造、それには島嶼の研究・調査・教育、医療・福祉、水産加工、廃棄物のリサイクル工場、娯楽などの多機能施設を完備する。さらにヘリコプターや快速艇を搭載して、遠近の島々へ緊急援助に出動できるようにしたいとの提案である。

その後で山階会長は、「同様の構想を柳田国男先生がすでに述べられているが、私にしてもそれが実現したい第3の夢です」とコメントされた。それにつけても、種子島から空を見上げて嘆息することは3度としたくないものである。