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人類は1つの家族である

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年9月8日

筑波大学名誉教授 村上 和雄(第2892号・平成26年9月8日)

2014年3月末から4月末まで約1ヶ月間船旅を経験した。オーストラリアの西海岸パースから出発し、インド洋を渡りアフリカの喜望峰を経て、アフリカ大陸西海岸を北上した。

アフリカのケープタウンでは、南アフリカの黒人に対する不条理な人種差別政策に徹底抗議して、それを廃止させ、 南アフリカ共和国の初代黒人大統領となったネルソン・マンデラの偉大な貢献を改めて知った。彼は1962年国家反逆罪で終身刑に処せられたにもかかわらず、 最後まで希望という武器をかざし続けて戦った。

また、マンデラ氏と共にノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ大主教と出会ったのは、私が総合司会を務めた2006年11月広島国際平和会議で、そこで講演も聴いた。

ツツ大主教の講演の核心は、罪を犯したものを許すということだった。南アフリカの人種隔離政策が終わりを告げたとき、多くの人々は残虐な報復行為が起こるのではないかと考えた。 しかし、それは起こらなかった。むしろ、和解のための委員会が開かれた。その理由は、長い間虐げられてきた黒人が寛大な精神をもって許そうとしたからだ。大切なのは、 現実を直視することだ。感情的には非常な困難を伴うが、南アフリカではまさにそれが行われている。

人は変われる。善良な人間になることができる。昨日の敵でも、明日は友になれる。これが南アフリカで起こっている。ならば、世界中の何処でも可能なはずだ。

ツツ大主教の他に、二人のノーベル平和賞受賞者・ダライ・ラマ14世とベティ・ウィリアムズ女史の発言も、民族、宗教、国家の次元を超え、 図らずも「人類は1つの家族である」ということで一致していた。

それぞれが、想像を絶する苦難を乗り越えながら、弱者に対して温かい手をさしのべ、不正義に対し敢然と戦っている。そのような人々の姿に接し、私は大いなる勇気を頂いた。