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ビル・ゲイツ氏の慈善事業

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年10月11日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2736号・平成22年10月11日)

ソフトウェア界における技術革新をリードしてきたマイクロソフト社の創設者であるビル・ゲイツ氏が、53歳という若さで経営の第一線を退き「ビルとメリンダ(夫人の名前)ゲイツ財団」の活動に主軸を移した。

この財団は、ビル・ゲイツ氏の個人資産のほとんどすべてに当たる5兆円を投じて、2000年に設立された世界最大規模の慈善財団である。

「すべての命は平等の価値を持つ」という根本理念に基づいて財団は設立された。

2007年には1億3,000万人の子供が誕生したが、そのうち1,000万人が亡くなっている。そのほとんどは、世界の貧しい国の恵まれない子供たちだ。

財団の目標は、子供の死亡をゼロにすることである。そのカギを握るのはイノベーションであり、新しい方法で病気の診断、治療、予防を行い、人々の命を救うことである。

例えば、2000年にエイズ、結核、マラリア撲滅のためのグローバルファンド(基金)の創設に寄与した。このファンドは、世界の保健医療のための資金を供給する上で画期的なイノベーションであり、すでにマラリア治療における世界最大の資金源となっている。

ゲイツ氏の講演やその後のトークセッションを聞き強く感じたことは、一見相反するように見えるITビジネスと慈善事業を、明確なビジョンと希望を持ち、しかも楽しみながらやっているということである。

その根底には「他を助けることは、人間の本性だからだ」という哲学がある。そして、慈善事業の成功のために、政府高官をはじめ貧しい多くの人々と直接会い、世界各地を駆け回っている。