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人類は一つの家族である

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年2月11日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2629号・平成20年2月11日)

平成18年に広島で国際平和会議が開催され、ノーベル平和賞受賞者が来日した。それは次の三名である。亡命生活の中、愛と非暴力でチベット問題を解決しようとするダライ・ラマ法王。南アフリカの不条理な人種差別政策を廃止させ、人々の和解につとめるデズモンド・ツツ大主教。北アイルランド独立闘争で犠牲なった子供たちのために立ち上がったベティ・ウイリアムズ氏である。

三人の発言は、民族、宗教、国家の次元を超え、図らずも「人類は一つの家族である」ということで一致していた。それぞれが、想像を絶する苦難を乗り越えながら、弱者に対して温かい手をさしのべ、不正義に敢然と今なお闘っている。そのような三人の姿に接し、私たちは大いなる勇気をいただいた。

私はこの会議の総合司会をつとめた。その中で次のように発言した。医学・生物学上で20世紀の最大の発 見は、DNAの構造の発見と、遺伝の仕組みがわかったことである。その結果、カビも昆虫も、植物も動物も人間も、生きとし生けるものすべては、同じ遺伝子暗号を使っていることがわかった。

このことは、相争っている人間も、自然環境の変化にさらされているすべての生物も、最初に生まれた命につながっている兄弟姉妹であることを意味している。

だからこそ、人と人が愛し合い、助け合い、そして、人間以外のすべての生物を思いやる心が大切であることを、生命科学の現場にいる者として感じている。

この会議の最後に採択された広島国際平和会議の共同宣言文には次のような一節があった。『私たち人類は一つの家族です。私たちは、他者が味わっている苦しみ、痛みに無関心であることをやめて、子ども、弱者、高齢者の問題を、世界全体で考えなければならないのです。問題が起こっているその原因は、私たち自分自身にあります。そして、その解決もまた私たち自分自身から始まるのです。世界を変えるのに必要な力は、あなたの中にあるのです』。