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人間至上主義の変革

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年4月23日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2598号・平成19年4月23日)

私たちは環境問題を考える時、宇宙、地球、水などの目に見える自然だけを問題にしていますが、実は自然には目に見えない自然の働きがあります。

その働きとは、すべての生物の遺伝記号を極微の空間に書き込み、生物を生かし続けているサムシング・グレートとしか表現できない偉大な働きです。

遺伝子研究の最新の成果によって、多くの遺伝子は眠っていて、オン・オフを繰り返していることが分かりました。常に働いているヒトの遺伝子は、全DNAの僅か3%位です。

したがって、良い遺伝子のスイッチをオンにすることができれば、人間の可能性は大きく拡がります。遺伝子のオン・オフは、遺伝子をとりまく環境因子やストレスによりコントロールされています。楽しみ、喜び、感動、祈りなどでも、良い遺伝子がオンになる可能性があります。

人類の持続的な発展のためには、その資源を地球や宇宙にだけ求めるのではなく、生物、特に人間自身の中に無限ともいえる可能性が開発されずに残っていることを知る必要があります。

そもそも、持続的な経済成長や発展が本当に必要なのでしょうか。日本を含め、特に先進国といわれる国々が、さらに経済的に成長し、いま以上に経済的に豊かになることが、その国の人々の本当の幸せに役立つのかという根本問題に立ち返る必要があると思っています。

私たちは、地球に優しい技術開発と言いますが、それは人間の傲慢を表しているのではないでしょうか。むしろ、地球が優しいからこそ、我々はいま生存できているのではないでしょうか。それもいまや限界に近づいています。

自分一人の力で生きている人など誰もいません。世界中の科学者が総結集しても、細胞一つ元から創れないのですから。

私たちは、サムシング・グレートを含む自然や他の動植物のお陰で生かされて生きているという真実を再認識し、人間至上主義を変革することが必要であると考えています。