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一人は全員のために、全員は一人のために

印刷用ページを表示する 掲載日:2005年9月12日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2533号・平成17年9月12日)

人間の体の中では、約60兆もの細胞が、それぞれ独自の役割を果たしながら、協力して全体の調和を作り出しています。今日も健康で生きられているのは、ただ一つの命の健康ではなく、約60兆もの顕微鏡的生命である細胞が、秩序正しく協調しながら、働いてくれるお陰なのです。

約60億の人口の地球上では絶えず混乱があるのに、私たちの身体では、その一万倍もの細胞が一刻の休みもなく働いていて、毎日生かされていることは、なんと不思議なことでしょう。

遺伝子の性質に、助け合いの機能があります。私たちの身体の臓器は、細胞が寄り集まって出来ています。助け合いによってつくられています。細胞には個性があり、臓器の中で自分の役割をよくわきまえて、働いています。つまりは、個性を発揮しつつ、自分の役目を果たしているわけです。

トップが号令をかければ、部下は黙々とついてきた。それは、高度成長時代のことです。貧しくて、少しでも豊かになろうと、皆が同じ目的に向かっていたからです。しかし、今は、そうは行かなくなりました。トップの構想と現場の思いが一つになったとき、お互いの協同作業ができて、成功をおさめるのです。人間の身体でいえば、まさに「個」と「全体」が調和して働く姿です。役割や個性の違った者同士が、一つの目標のために、自分の役割に徹しきって協力していくのです。

頭が一番大切で、手足はどうでもよい・・・なんてことはありません。それぞれが、自分の持ち場を大切に、コツコツと働いています。これからの社会は、生命体のこうした働き、仕組みをうまく取り入れていくべきでしょう。

大自然の思いに沿って働くとき、すばらしい力が出ます。限界を突き破って、すばらしい人間になれます。そして、今までの価値観を変えるような、世直しになるような動きに発展するでしょう。