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ガン細胞のようなエゴは自分も滅びる

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年11月8日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2499号・平成16年11月8日)

病気は遺伝子のしわざですが、環境因子も関係してきますから、同じ遺伝子を持っていても発病しないこともあります。それは、病気の遺伝子が眠っているからです。それが、ある時期、ある原因でオンになると病気になります。

どういうときにオンになり、どうすればオフになるかは、遺伝子暗号の解読が進めば、かなりの確率で予測がつくようになるでしょう。そのとき必ず、精神作用の影響も明るみに出てくるはずです。

ガンという病気が治療しにくいのは、発ガン因子が多様なためですが、そこに精神作用を含めた環境因子が大きく関わっているからだと思われます。ガンには、発ガン遺伝子とガン抑制遺伝子があって、両者のバランスが崩れたときに発病することがわかっています。

そのバランスの失調は、発ガン遺伝子がオンで、ガン抑制遺伝子がオフというかたちをとります。このオン・オフは、その人の生活習慣や考え方によっても違ってくるように思われます。

ガンになる遺伝子も、高血圧になる遺伝子も、人間は誰でも持っているのです。これらの遺伝子は、なにも病気を引き起こすことを目的としているわけではありません。身体にとって必要な遺伝子なのです。

細胞の中でおとなしく調和していれば、何も問題は起こしません。それが、一定水準を超えて増殖してしまうと、病気として現れてくるのです。ガンはガンの遺伝子の役割が普通の状態と異なったときに発病するものなのであって、遺伝子があるからといって、必ずしも病気になるわけではないのです。

ガン細胞は、助け合いのルールを破り、自分だけドンドン増殖して、器官をおかします。さらに、人間の身体そのものを死に追いやります。その結果、ガン細胞自身も死ぬことになるのです。

自分さえよければよいと思うエゴは、下手をすると、ガン細胞のように自分自身を殺すことになりかねません。