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「笑い」は副作用のない最良の薬

印刷用ページを表示する 掲載日:2004年7月26日

筑波大学名誉教授 村上 和雄 (第2488号・平成16年7月26日)

日本では「笑う門には福来たる」という諺があり、外国では「笑いは副作用のない最良のメディスン」と言われています。

笑うことは人々の健康に良い影響を及ぼすだけでなく、病気の治療にも役立つ場合があります。通院加療中のガンの患者に、漫才、喜劇などを鑑賞してもらうと、自然免疫の中心的役割を担うNK細胞の活性が上昇します。アトピー性皮膚炎の患者に、喜劇ビデオを鑑賞してもらったら、症状の改善が見られたこともあります。

最近、私どもは吉本興業株式会社の協力を得、「笑い」によって多くの遺伝子がオンになるとの世界で最初の結果を得ました。

遺伝子の大切な働きは、その情報を世代を越えて伝達することですが、実は、遺伝子にはもう一つの大切な働きがあります。それは、遺伝子は私たちの全ての細胞で、いま、一刻の休みもなく正確に働いていることです。この遺伝情報に基づいて、タンパク質、酵素やホルモンなどが作られ、この酵素やホルモンなどが体を動かしています。最近、面白いことに、多くの遺伝子が働かずに眠っていることが分かってきました。この遺伝子が、いろいろの刺激で目を覚ますメカニズムの研究が進展しています。

1997年に私は、精神的なストレスによっても遺伝子のオン・オフは調節されていることを確信し、仮説として発表しました。その時には、私の仮説を裏付けるデータは殆どなかったのですが、ごく最近、電気ショック、拘束、試験などのストレスが、遺伝子のオン・オフに影響するという報告が次々と発表されています。

私は「笑い」「喜び」「感動」などの良いストレスにより、遺伝子のオン・オフの働きが変わると思っています。

「笑い」については、データが出始めましたので、このことを、科学的にぜひ証明したいと思っています。そして、多くの眠っている良い遺伝子をオンにすれば、人間の可能性は、まだまだ開発できることを示したいと考えています。