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育つパートナーシップ

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年8月5日

早稲田大学教授 宮口 侗廸  (第2408号・平成14年8月5日)

去る七月中旬、東京で第五回の「川の日」ワークショップが開催された。平成8年に7月7日が「川の日」とされ、翌九年には河川法の改正が、環境保全と住民の意見の重視という、大きな方向転換を示した。この流れの中で、どんな川が“いい川”なのか、いっそ全国から川を持ち寄って議論したらという発想が生れ、河川環境管理財団の助成を受けて、平成10年からこの大きな行事が始まったのである。

わが国ではほんの少し前までひたすら川をコンクリートで固め、開発の落とし子として小河川がドブ川状態になり、ホタルやメダカが姿を消した。こんな状況に対して、自然の価値に敏感な人たちによって、さまざまな運動が展開されてきた。そしてその運動と真摯に付き合ってきた役人や研究者とその人たちの間に、パートナーシップという“いい関係”が、全国各地で数多く生れている。これこそ今の日本で広く知ってもらいたい“いい話”だと思う。

住民たちが遠くの専門家や“川仲間”から学んで力をつけながら、役所や工事関係者としぶとい協議を重ね、結果として多くの“いい川”が生れつつある。国の工事事務所や県の担当部局による“いい整備”の事例も多く生れ、このワークショップで賞に輝いた。筆者も、数百人が見守る公開の席で審査員として討論に参加し、いつも興奮と嬉しさを禁じ得ない。それは、パートナーシップによって社会が進化していることが、その場で実感できるからである。

今年は韓国からの5チームの参加を含めて73チームの参加があり、天竜川上流工事事務所、筑後川流域連携倶楽部、寝屋川再生ワークショップの3者がグランプリに輝いた。ちなみに昨年のグランプリは、絶滅寸前のイシドジョウの調査結果を、近くの小学校を回って熱く語っているという、北九州高校の魚部(ぎょぶ)だった。“いいお兄ちゃん”がいるところでは、“いい子供たち”が育つ。このような“いい話”に、町村関係者も大いにかかわってもらいたいものである。