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全国炭焼大会での発見

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年10月2日

評論家 草柳大蔵(第2330号・平成12年10月2日) 

静岡県の川根町といえば、デコイチが煙を吐いて峡谷を走り、うまく掘りあてた温泉に入り込み客が多く、玉露が評判で、そのうえ町長の河野敏郎氏は清水次郎長の後えいだと、話にコト欠かぬ土地である。そこで9月の半ば、「全国炭焼きサミット」が開催された。講師は松本聰東大教授(農博・中央環境審議会委員)、山田豊文(杏林予防医学研究所所長)、落合博満(野球評論家)。私もコーディネーター兼基調講演者として参加したが、さて、会場に詰めかけた人を見ておどろいた。1,000人を少し超えている。しかも老若男女さまざまなのである。野次馬らしいのは1人もいない。韓国から来たという5人の人も会場の人も、すべて炭焼きだった。中山間地対策とか年寄りの小遣い稼ぎとか、そんなマイナーなイメージはほとんど見られず、知的障害者をあずかる施設で炭焼窯も併設しているとか、新入社員に“活”を入れる農事作業の一環としてやっているとか、じつにエネルギー溢れる有様である。

私は静岡県の子どもの教育の新システムを作る仕事もしているので、これから県下の中・小学校の全教室に対角線に炭籠をおかしてもらう提案をした。空気中の水蒸気などが炭の表面にくっつくと水分子から水素イオンを引きぬくので水酸イオンが残る。これがマイナスイオンでフィトンチッドと同じ。子どもたちは教内で森林浴が出来るのである。

私だけではなく、さまざまな提案があって楽しかったが、これから先、全国の“炭焼き”が漆詰めで考えるべき問題も出た。

木酢や竹酢の等級の問題である。木や竹を炭にする場合、窯から出る煙を冷却すると黒い酢になる。これは糖尿病や水虫に効くといわれ、精製して女性の整肌クリームにまでなっている。ところが、この酢の出来具合がピンからキリまである。丁寧に採取したものは性質も効果もよいが、大ざっぱな仕事のものはただ酸味が強いだけという有様。1日も早く等級別をして市場に出さないと、悪貨は良貨を駆逐することになりかねない。好事魔多しの1例かも。