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PFIへの期待

印刷用ページを表示する 掲載日:1999年5月10日

評論家 草柳大蔵(第2271号・平成11年5月10日) 

PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)が、船でいうと出港準備の段階に入っている。日本各地で自治体の当事者やゼネコンの役員を集めて講習会がさかんにひらかれている。聴衆の方からすでに「建設省のお役人から同じ話を何度も聞かされてかなわんわ」という苦情が出ているが、考えようによっては、国がそれだけ本腰を入れていることでもあり、これからPFIによって社会資本投資が「効率とコスト」を軸に展開されている事を思えば、よろこばしい話である。

PFIはそんなに新しい手法ではなく、1980年代に入ってすぐイギリスが採用し、今では東南アジア諸国がこの方法に習熟している。日本にとって最大のメリットは、従来は基本設計が発注者で行われ詳細設計のみが民間で行われていたが、「設計・施工」が民間サイドで一括される。また、落札基準が、会計法令や地方自治令上、単に入札価格の最も低いものとされていたのが、価格のみならず性能評価や代替案との比較なども吟味に中に入りそうである。応札先も一定の登録企業に限定されていたが、意欲のある企業ならいつでも参入できる門が開かれる。私はこの“応札自由化”がもたらす、ひとつのメリットに注目している。従来の入札方法では特許工法を持っている企業は応札から排除されてきた。特許工法ゆえにその企業が落札する可能性が強いとの理由である。まさに、「機会の平等」より「結果の平等」を重んじる戦後民主主義の歪みの象徴であったが、国民の公共の福祉のために大事な資金を生かすという前提が「特許工法」の参入をかなえたわけである。

ところで、いま、民間業者の間で頭を悩めているのが、その「資金」である。融資の手当はついても、融資返済の財源は事業から生じるキャッシュ・フローになるので、ひき受けた事業が果たしてうまくゆくかどうか、その見通しや運営を誤ると重荷を背負うことになる。天気晴朗なれど波高し。PFI船の行方を見守ろう。