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レストラン専用の食材を

印刷用ページを表示する 掲載日:1999年4月5日

評論家 草柳大蔵(第2267号・平成11年4月5日) 

じつに30年ぶりに見直しが行われた「新農業基本法」は、この4、5年間に取沙汰された議論や提言が凝縮されていて、なかなかおもしろかった。要は、この新農基本法に盛り込まれた問題意識を積極的に実現してゆくことだろう。

日本にくる外国人達の間にはなかなか食通が多い。彼らが、まず、驚嘆するのは日本で世界中の料理が食べられることである。しかも、料理によっては本家本元のものよりもうまい、日本人は真似事がうまいと聞いてはいたが、料理まで改良するとはおどろきだ、との評価になる。ここまでは日本人である私も安心して聞いているのだが、「ご馳走になってこんなことを言うのは悪いけれど」の言葉のあとに出る批評には、毎度、耳の痛い思いがする。和食・洋食を問わず「アンリーズナブル」(不合理だ)というのである。これには反論の余地がない。ことにスシ屋ではどうしようもない。なぜ、小さなライスの上のマグロ1片で千円もするのか、と聞かれても説明のしようがない。もうひとつは野菜のまずさである。トマトもキュウリも、全く本来の味がしない。デザートに出てくるイチゴも形はびっくりするほど大きいが味はまったくなく。匂いも漂ってこない。「どうしてなのか?」と聞かれて、ほとんどハウスで作ってしまうからね、と答えると「なんだ、太陽を浴びてないのか」と、悲しそうな顔をする。

そこで提案だが、このたびの「新農基法」の第17条に「国は食品産業の健全な発展を図るため事業基盤の強化、農業との連携の推進、流通合理化などの施策を講ずる」とあるのを政策化して、せめて国民が家族連れで楽しんだり、外国人招待するようなレストラン専用の「特別食材供給農場」を地方自治体ごとに作らせてはどうだろうか。もちろん露地栽培を基本とするが、担い手には「定年帰農者」や農業OBを当てればよいだろうと思う。