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16時間生放送

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年5月18日

千葉市女性センター名誉館長・アナウンサー(元NHK) 加賀美 幸子
(第2679号・平成21年5月18日)

4月29日、「昭和の日」に、立川志らくさんと加賀美のトークによる「名曲無限.戦後歌謡三昧(FM)」を放送した。朝9時過ぎから夜中の1時まで16時間、まさに一日を通しての生番組であった。戦後といっても終戦すぐの昭和20年代30年代だけでなく、今に至るまで、励まされ元気づけられた歌たちとその心を味わいたいという趣向であった。

リクエストも多かった。それぞれの年代の胸に焼きついている歌の中に、辿ってきた日本の道のりが自然に浮かび上がってくる。歌詞に登場する乗り物を取り上げても、馬車やリヤカーから自家用車、飛行機へ。女性の様子も変わった。愛の表現も変わった…。放送しながら司会者も同時に励まされ、リスナーからも「どの人のリクエスト曲も私の大事な歌と気持ちが重なっているので、自分のリクエストとも思える」という声が放送中にも届いた。人々を励まし元気づけた歌たち。16時間の放送には、いくつものテーマがあったのだが、中でも楽しみは、昭和34年の「第10回紅白歌合戦」をそのまま放送したこと。

当時皇太子様と美智子様のご成婚の年、その12月31日に行われた放送である。テレビ放送が始まってまだ間もない頃、多くの人はラジオで聞いたことであろう。

司会は高橋圭三さんと中村メイコさん。明解で豊かな表現、そして歌手の皆さんの何と言う言葉の美しさ、歌の上手さ。歌合戦も、まさに歌だけの正面勝負。胸がときめく。二葉あき子さん、石井好子さん、越路吹雪さん、美空ひばりさん、伊藤久男さん、フランキー堺さん、高英夫さん、春日八郎さん紅白各25組。高らかに響く歌声。過剰な応援合戦もないシンプルな舞台だけに歌の力がそのまま伝わってくる。紅白のみならず、シンプルであることが、こんなにも人の心を動かし、聴く側の心に自由に広がるものか。我々が辿ってきた道のりを歌とともに、リスナーと共感しあえた16時間は、(長時間で)疲れるどころか、元気の出る豊かな時間でもあった。