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見えない所に潜む力

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年10月13日

千葉市女性センター名誉館長・アナウンサー(元NHK) 加賀美 幸子
(第2656号・平成20年10月13日)

同じ文章を読んでも…とくに、朗読やナレーション、ニュースやお知らせ原稿などでもそうだが、人によって全く違って聞こえるのは当然のことである。強弱、高低、太い細い、柔らかいきつい…など元々持っている声そのものの質が違うのだから、それは当然なのだが、上手い下手は関係なく、自然に心地よく内容が伝わってくる人、自然でなくても何だか惹きつけられる表現の人、残念ながらその逆の人があるのは、どうしてなのか。

理由ははっきりしないのに、音声表現を生業としている立場からは決定的に物事を左右してしまう怖いことでもある。「どうしたら魅力的な朗読ができますか? 何に気をつければいいですか?」とよく聞かれる。言葉そのものを大事に発声するのは勿論だが、声に乗せる言葉と言葉のあいだの「間」の取り方や、その息づかいだとお答えすることが多い。

しかし、見えない聞こえないところなので、説明は難しい。でもそこに何事か大きな力が潜んでいるのは間違ないのである。その人の心、思い、在り方、生き方、暮らしてきた道のり…見えないものが大きく息づかいに影響しているのだと思う。息をしていることは生きることにつながるのだから、どう生きてどう感じているかは、当然息づかいに現れ、朗読やナレーションに深く影響してくるのだと思う。

ホリスティック医学が今大事に捉えられている。人間の体は「身体、精神(心)、命」でなりたっている。体の部分だけを直しても健康にはならない。こんなに医学が進歩しているのに、癌その他、病気は益々多くなっている。部分だけでなく身体をそっくりそのまま見ていくのがこれからのホリスティック医学だという。心や命は目に見えない。心がどこにあるか証明されていないけれど、見えないところに人間を活き活きとさせる大きな力が潜んでいて、そこを意識し活性化することが人間の本当の健康につながるということを伺いながら、朗読、語り、そして日常のトークにつながる大きな鍵を嬉しく感じたのである。