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昭和史に学ぶ

印刷用ページを表示する 掲載日:2006年8月17日

千葉市女性センター名誉館長・アナウンサー(元NHK) 加賀美 幸子
(第2570号・平成18年8月17日)

ベストセラーの『昭和史』…著者の半藤一利さんはこうおっしゃった。「ある女子大で50人の学生に第二次世界大戦で日本と戦争をしなかった国はどこかと質問をしたら、その内の10人を越す人たちが、アメリカと答え、驚愕した」と。

それを伺い、私も驚いたが「仲の良いアメリカと戦争なんてするはずがない」と少女たちは思っていたのであろうか。私たちが辿ってきた道のりを知り、どう今後に生かしていくか…。歴史に学ぶことの大切さを若い人たちに語りはじめたところ、真実に迫る筆者の勢いは老若男女の心を捉えて、大ベストセラーになったのである。

「何年に何があった」と古代史や中世史の年号を覚えることはするのだが、近い昭和史を知らないことが実際あまりにも多い事を改めて知らされた。日本の開国から、人々は一丸となって近代国家を目指すという機軸を持ってやってきた。しかし日露戦争の勝利などに酔いしれたり、つかの間手にした近代文明に自信過剰となり、次の戦争に向かってしまったのである。終戦のあと、また人々は一丸となって平和と経済を大事に突き進んできたのに、バブルにしてしまう愚かさ…。人間とは何か、日本とは?…『昭和史』は丁寧にその心を語ってくれる。今、誰もが将来に不安を感じている。歴史を知るだけでなく、どう捉え、その中から、何を学べるか…。

国民的熱狂や少数団エリートに振り回されず、多分大丈夫であろうという希望的観念論でなく具体的理論を持ち、国際社会の中での日本の立場を見つめ、その場その場の泥縄で対処することなく、ごまかしのない方策…をとることの大事さを、かつての失敗から真摯に学ばなくてはならない…。そしてどうすべきかの機軸を持つことの大事さ。昭和を知るだけでなく、その成功と失敗を見つめると、歴史は道を教えてくれていると著書は語っている。