ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > コラム・論説 > 寄らば大樹の蔭? TPPの七不思議

寄らば大樹の蔭? TPPの七不思議

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年4月8日

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2836号・平成25年4月8日)

①百年の大計?
日本の輸出産業である製造業の安定を図るだけであれば、戦後66年やり続けたことの残滓ではないか?。国民生活に密着しており国内産業の大半を占める第三次産業、 医療、福祉、保険といった大切な分野を置き去りにして、逆に大津波にさらすことになるのではないか?。

②参加しないとアジアの成長に乗り遅れる?
アジアの急成長国である中国、インド、韓国が入っていないのに?。逆に中国を囲い込むような体制に入ることにより、中国市場から排除されることになれば、 そのマイナスは甚大である。

③これから交渉に入って日本の主張が通る?
すでに交渉参加国は、16回も会議を重ねている。後から入ったカナダとメキシコは、それまでの協議結果を丸飲みすることを条件に交渉参加を認められた。 すでに確定した内容には口出しはできず、文言の変更も認められないのである。日本は別格だから交渉を巻き戻せるというのか?。

④日本が求める市場開放は?
日本の主張は、農産物などの聖域化という守りの話しか出てこない。各国市場に何の開放を求めるのか?。

⑤国民の支持率60~70%?
道府県議会、市町村議会の9割は反対、地方紙もほとんど反対の中で、なぜ大新聞の世論調査で「60~70%が賛成」となるのか?。マスコミはなぜか自民党の TPP交渉参加という政権公約違反には目をつぶっている。自分たちの業界の聖域化を主張しながら。

⑥なぜ悪いニュースが伝わらないのか?
米国の市民団体が入手し、「1%が大多数の人々の生存権を奪うものだ」と告発したTPP草案の中身はおぞましいものである。米国巨大企業の顧問弁護士団が、各国の 非関税障壁を告発し、法律や条例の変更を迫り、解決されなければ莫大な賠償金を要求する準備に手ぐすねをひいている。なぜこういう情報が伝わってこないのか?。

⑦寄らば大樹の蔭?
要するにTPPは、経済の面でも米国という大樹の蔭に入ろうということなのか?。しかしこの大樹は、国民生活の基盤に広く深く根を下ろし、栄養分を吸い上げて、 実った果実を巨大な国際資本が食べる仕掛けではないのか?。しかも、根からは毒素を出して、周囲の産業や文化、生活を枯らす力まで持っている。