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女性たちのまちおこしのきっかけ―「料理のワークショップ」―

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年4月6日

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2675号・平成21年4月6日)

ここ数年、まちおこしのプログラムとして、各地で「料理のワークショップ」を展開してきた。パートナーは熊本県人(ひと)吉市の郷土の家庭料理レストラン「ひまよしわり亭」代表の本田節(ほんだせつ)さんである。

参加者は自分の家でとれた季節の食材や加工食品を持ち寄り、本田さんがそれらの材料を見て、十数種類の献立を考える。献立が決まれば各回 名ほどの参加20者は自然に役割分担をしながら、日ごろの家庭の台所での技を駆使して手早く料理を仕上げていく。味付けは経験にものを言わせて目分量だが、栄養バランスやコスト、調理時間には厳しいチェックが入る。野菜の皮なども無駄なく調理され、ほとんど捨てるごみが出ないという徹底ぶりである。それぞれの地域で伝統の郷土料理2~3品の他は、すべて本田さんオリジナルのおもてなし料理という料理が出来上がったら、バイキング方式の試食・懇談会が始まる。各地の参加者は、この食材でこんな料理ができるのかと驚き感心することしきりである。

ワークショップの狙いは新たなコミュニティビジネスを立ち上げるきっかけを作ることにある。始まるまでは遠い存在だった農村レストランの運営が、実際に自分たちの手で生み出された料理を目の当たりにし、さらに味わうことによって、意外に手の届くところにあることに気づいていただく。もともと農山漁村の女性たちは、地域に冠婚葬祭があれば大人数向けの料理を手分けして作ってきた。みそや漬物、その他の食品加工はお手の物、何より日頃、家族の健康を考えて食を担ってきた達人である。その思いと技を生かせば時代のニーズに合う安心安全の食を提供するビジネスの担い手としての資格は十分である。そして女性たちは一度目覚めれば行動は早い。料理のワークショップから、すでに各地でコミュニティビジネスに向かう動きが生まれている。

では調理の間、私は何をしているのか。地域の男性たちとまちづくり談義をして意識をほぐし、女性の活躍の場を広げるのが、私の役目のようである。