一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3318号 令和7年4月28日)
国内外の地方都市や農山村を歩いてみて、日本の地域社会に一番欠けているなと感じるものは、広場です。
例えば、15年くらい前に農山村を旅したイタリアでは、どんな小さな村でも中心部に広場があり、地域内外をつなぐ交流拠点となっていました。そこにはカフェやレストランがあり、朝に昼に夕に人々が出会い語らう、楽しい時間と空間が生まれています。まさに、家と職場に加えて、暮らしに厚みと潤いを与える第三の場所=「サードプレイス」となっているのです。
30年ほど前に1年間ほど暮らしたニュージーランドでも、都市の街角や村の真ん中に必ずパブがあり、住民にとっても旅人にとっても貴重な憩いの場となっていました。ニュージーランドは、日本に比べると人口密度が20分の1しかない国です。しかし、パブのような多彩な人々が自然に集う広場的な空間を創ることで、人口がまばらでも人間関係は広くつながっている状態を作り出しています。
私は、これからの時代、日本においても広場を創っていくことが地域社会にとって大切になってくると考えています。その理由は3つあります。
第一に、都市でも農山村でも家族の人数が極端に縮小し、従来の家族の機能を補完する共同の仕組みが必要となって来ているからです。つまり、例えば一人暮らしが増える中で、家族単位での食事やケア、子育て等に無理が生じており、地域内で協力する場が求められているのです。
第二は、人間は元来社会的動物であり、最近のような孤立や分断が広がる社会状況では不幸を感じる人々が増えているからです。多様な存在をありのままに受け入れ、自発的かつ多角形のつながりを醸成する柔らかい広場のような空間が望まれます。
第三は、これから必ず循環型社会へと進化していく中で、身近な日常的な生活圏の中心に、交通や物流、エネルギー等の複合的な循環拠点が不可欠となるからです。
これからの地域づくりの基軸に、広場の創出を置きたいものです。