一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3310号 令和7年2月17日)
ここ10年、多くの組織、拠点が地域から消えていく中で、ほぼ唯一その数を増やしているのは「こども食堂」です。今やその数は全国で1万ヵ所を超え、中学校数を上回っています。活動の幅も広がり、こどもからお年寄りまでが垣根なく集う居場所へと進化しています。
今年度、私の研究所では、全国プロジェクトの一環として、こども食堂をはじめとする地域の居場所づくりの効果について研究を進めています。具体的には、山口県内のこども食堂の関係者に集まっていただき、それぞれの地域社会の組織や団体の構成図をまとめ、こども食堂がどのような新たな関係性を生んでいったのか、描き出していきました。
その結果は、驚くべきものでした。分野や地域の枠を超えて、こども食堂の活動を支える輪が広く多彩に育っているのです。これは、従来からの地域組織、例えば老人会や農業法人、商店街等の活動が比較的限定された分野、エリアに留まっている状況と好対照です。
私は、こども食堂による社会的なネットワークの広がりには、3つの理由があると分析しています。
第一は、こども食堂は非営利活動であり、その分利害の対立なく、多様な主体の自発的な協力を得ることが出来ます。第二は、こども食堂の多くは、月1回から週1回程度の開催であり、個々に求められる負担は極端に大きなものではなく、裾野が広がりやすいのです。第三は、活動の枠組みが三角形を成していることです。人間、直接自分を助けてくれとは言いづらく、誰かを助けたいから力を貸してと言う方が巻き込みやすいものです。そして、事務局である「まとめ役」、当日運営や食料提供で協力する「たすけ役」、そしてこどもたちのような「支えられ役」が、それぞれ「てこの原理」でいう「支点」、「力点」、「作用点」を構成しています。ここに、こども食堂の秘密があると思います。そして、実は一番しんどい「支点」を担う「まとめ役」の方に心から敬意を表する次第です。