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「関係人口」と「協働人口」

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年10月4日

農業ジャーナリスト・明治大学客員教授 榊田 みどり(第3175号 令和3年10月4日)

今年度、山形県小国町の「振興審議会」に参加させていただいたが、同町の「過疎地域持続的発展計画」案で、目に留まった言葉がある。

「協働人口」だ。町内外で「小国にかかわり続けてくれる人々」を、「関係人口」ではなく、同町では「協働人口」と表現しているのだ。

同町は、これまでも交流・移住・定住推進事業に力を入れており、「移住者コミュニティ」も設立され、定住支援や地域と移住者の橋渡しなどの活動を行っている。「協働人口」という言葉は、同町が進める「協働のまちづくり」の文脈に沿い、「関係人口」の中でも、まちづくりにまで関わる人々を指しているようだ。

「関係人口」という言葉が活字として登場したのは、2016年。「都市と地方をかきまぜる」(高橋博之氏著)が最初だった。その後、急速に普及し、今では省庁の政策でも多用されるようになったが、それだけに、自分の地域の実情に照らし合わせてこの言葉を咀嚼することなく、「なんとなく」使われることが増えていないか、近年は気になっている。

もともと「関係人口」といっても、現実には「関係」に濃淡がある。たとえば、山口県周防大島町の㈱瀬戸内ジャムズガーデンでは、コロナ禍後、「レモンチェッロ・プロジェクト」を始めているが、社長の松嶋匡史氏は「いわゆる関係人口より少しゆるい感じ」の関係づくりと言う。

「レモンチェッロ」はレモンから作るリキュールで、クラウドファンディングで資金を募り、協力者とともに耕作放棄地にレモンを植え、畑の管理・収穫・酒づくりまで継続して島を訪れてもらい、一過性の観光より長いスパンで島内の人々との関係性を深める交流事業だ。

長野県飯田市では、「ふるさと納税」を「ふるさと飯田応援隊」と名付け、市の取り組むプロジェクト別で納付希望先を募る取組をしている。以前は、市内20行政区のエリア別での納付希望を受け付けていたが、これも「関係」づくりの入り口と言える。

ゆるやかな「関係」から「協働」へと徐々に深めていくための階段をどう用意するか。一方で、ゆるやかな距離感を好むひととの関係をつかず離れずどう維持していくか。「関係人口」の創出と重層的な維持には、地域それぞれが、よりきめ細かな戦略を考える必要があると感じている。