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「地域デビュー」をすべきでない!?

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年6月28日

作新学院大学名誉教授・とちぎ協働デザインリーグ会員 橋立 達夫(第3164号 令和3年6月28日)

最近、某週刊誌の記事に、高齢者が避けるべき活動として「住み慣れた自宅を売却する」、「退職金を投資に回す」、「妻の死後に再婚する」などと並んで、「地域デビュー」が挙げられていた。地域デビューすれば、無償でやたらと忙しい仕事が増え、その上、何かと責任を問われたり、時には非難を浴びたりで、ろくなことはないというのである。実際、全国的に自治会に加入しないという人が増えている。その主な理由が「役員になるのは嫌だから」である。

しかし、たとえば代表的な地域ボランティア組織である社会福祉協議会(以下「社協」)地区部会は、「地域住民同士が、自分たちの住んでいる地域の生活・福祉課題や困りごとを自分たち自身の問題と受け止め、関係機関や専門機関と連携・協働しながら解決に向けて協議し、『誰もが安心して共に暮らせる福祉のまちづくり』を目指す(岡山県社会福祉協議会ホームページより)」という使命を担っている。自治会もほぼ同様である。こうした住民の自主的な互助活動の必要性は広がっており、さまざまなサービス活動が展開されているのである。

自治会や社協地区部会の活動は、自治会の構成員から集められた会費や募金で成り立っている。公的な資金助成、補助もあるが、それらもほとんど、もともと自治会で集められた資金が、一旦、市町村や市町村社協に入り、還流してきたものである。自治会に入らない人たちは、こうした負担をせずに、自治会その他の地域ボランティア組織が行っているサービスを受けていることになる。

今、多くの地域ボランティア組織では、メンバーの高齢化が進んでいることもあって、慢性的なマンパワーの不足に陥っている。とくにIT技術に長けた若い世代(60代でも十分若いのです)の参入は渇望されている。地域デビューを厭わずに、一緒に暮らしがいのある地域をつくって行こうではないか。地域の中の人のつながりが、地域の新しい活力の源になる。待っているのは決して面倒な仕事ばかりではない。そこには、サービスを受ける側、サービスをする側という壁を越えた笑顔の交歓がある。自己実現のチャンスも広がっている。