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「ワーケーション」を考える〜地域や自治体の役割とは~

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年4月5日

國學院大學教授 梅川 智也(第3155号 令和3年4月5日)

コロナ禍における行政施策としてにわかに取り上げられつつあるのが「ワーケーション」である。業務を目的とした旅行(出張)に休暇を組み合わせたのが「ブリージャー(Bleisure)」(ビジネス+レジャー)、休暇を目的とした旅行に業務を組み合わせたのが「ワーケーション(Workation)」(ワーク+バケーション)と言われ、いずれも米国発の造語である。日本人にも比較的分かりやすい造語であることもあって、国や地方自治体の新たな施策として注目されているものと思われる。

欧米ではコロナ禍以前から「仕事と余暇」、「余暇と仕事」を効率良く組み合わせたライフスタイルがマイス(MICE)やビジネストラベルの潮流となっていた。そうした中で、事務所での「密」を避けたい企業の論理、どうせ働くなら自宅ではなく快適な環境の中でという働く側の論理、平日対策など需要の平準化や滞在化に繋げたい旅行・航空・宿泊など関連事業者の論理、そして交流人口、関係人口を拡大したい地域・自治体の論理がまさに一致した施策が「ワーケーション」であると言えるであろう。

どちらかと言えば、今は受け入れを進めたい地域や自治体の論理が先行している印象が強い。ただ、ネット環境(Wi-Fi)を整備し、仕事が出来るよう机や椅子を揃え、多少自炊も出来る設備を整えれば、受け入れできるといった安易な考えでは先が思いやられる。一方、企業側にとっても働く側にとっても、福利厚生を含めた新しい制度が確立されているわけではないため、いざ実施となると課題は山積しており、今後、普及に向けた各方面での努力が必要である。

地域や自治体の役割は、まずは来訪する企業や働く人々のニーズを丹念に調査、把握すること、そして地域の価値を高めるあらゆる工夫を凝らすことであろう。具体的には地域のヒト・モノ・情報をワーケーションで来訪する人々に「繋ぐ」こと、そこに新たな価値が創出され、明日に繋がる気づきや活力、創造力が生まれてくる。この役割こそが地域や自治体に求められているのではないか。