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ウィズコロナ時代の旅と観光 〜地域は「新しい生活様式」にどう対応していくか~

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年12月7日

國學院大學 研究開発推進機構 新学部設置準備室 教授​ 梅川 智也 (第3142号 令和2年12月7日​)

新型コロナウイルスの感染拡大は、我々の働き方や時間の使い方、空間の過ごし方など広範な領域に影響を及ぼしている。旅や観光の仕方についても当然ながらこれまでと同じというわけにはいかず、受け入れる地域の側も感染防止策を徹底し、安全・安心の証としてのブランドを構築しようと精一杯の努力を続けている。

これを支援しようと観光庁は総額90億円に及ぶ事業を立ち上げた。落ち込んだ観光需要拡大のための消費喚起策が「Go To トラベル」事業だとすれば、「新しい生活様式」に対応する地域支援策、観光衛生マネジメントに配慮した新しい観光まちづくりが本事業という位置づけである。1件あたり約2、000万円、地元負担なしというかつてない地域実証事業であることから、この夏の第一次公募には全国から1、980件の応募があり、厳正な審査によって307件が選定された。秋の第二次募集では100件程度が追加される予定である。

地域選定の基準は6つ。その1つが「新しい生活様式の実践」であるが、単に感染拡大防止のガイドラインを遵守するだけでなく、地域の医療体制等も踏まえた地域独自かつ実践的なコロナ対策を求めている。また、身近な地域を対象とするマイクロツーリズムに対応して、地域の人々が改めてわが地域の資源を深く見つめ直し、「骨太の方向性やストーリー性」を盛り込むことを求めている。

採択された地域に特徴的なことは、「3密」回避など感染防止策の徹底を前提として①自然志向、②分散志向、③滞在志向などをITの活用を通じて実現させていこうという方向性が明らかとなってきている。そして、誰でもよいから多くのお客さんをという千客万来志向から、数は多くなくともわが地域の資源や個性を理解し、責任ある観光行動をとってくれる人々を迎え入れるという地域側の主体的な意思が感じられる。

災い転じて福となすではないが、これまでの延長ではないウィズコロナ時代の旅と観光のあり方が、こうした事業を通じて、世界に先駆けてわが国から創造されることを切に期待している。