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コロナ禍で進んだ田園回帰と家庭菜園

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年11月9日

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章(第3140号・令和2年11月9日)

コロナ禍はいうまでもなく、化石燃料と原子力発電に依存した大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とする異常な産業社会・新自由主義経済が招いた当然の帰結である。そうした大きな問題に加えて、身近なところでもさまざまな変化が起きている。

たとえば、一般の人びとにもかなり知られるようになった田園回帰がさらに進んだようだ。2013年7月以降、7年近く転入超過が続いていた東京都が転出超過に変わったのである。20年5月は1、069人、7月が2、522人の社会減だ。神奈川県と愛知県も転出超過になった。

また、内閣府が2020年6月に行った「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、地方移住に「関心が高くなった」「やや高くなった」が15・0%を占めている。とくに20代が高く22・1%。東京23区在住者に限れば35・4%と、3分の1以上だ。

こうした田園回帰と親和性が非常に高いのが、農という言葉と有機農業である。農業で稼ぎ仕事として携わらなくても、大半の移住者たちが自給的な農に深い関心をもっている。農業が移住の目的ではなくとも、農的暮らしは実践してみたい。暮らしの一部に農的営みを取り入れてみたい。そこに共通しているのは、自分と地域・地球の本当の幸福、真の豊かさを実現するためにはどんな生活を送ればよいかを考える姿勢だろう。

もうひとつコロナ禍で進んだ(高まった)ことがある。それは家庭菜園や市民農園の人気だ。タキイ種苗が2020年7月に行ったアンケートによれば、自宅の庭やベランダ、市民農園などで野菜を育てている人の約3割は20年3月以降に始めたそうだ。ぼくが親しい練馬区の農業体験農園の園主によれば、働き盛りの年代の男性を平日の昼間に農園でよく見かけるようになったという。テレワークの拡大によって、「平勤休農」だけでなく若い世代に「平農」も増えつつあると見てよいかもしれない。そもそも、タキイ種苗が2017年2月に行ったアンケートによれば、日本人の約半数が家庭菜園経験者だ。これが正しいかどうかはともあれ、かなり浸透していることは間違いない。