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千葉県中央部の長南町で森林整備活動に励む「もりびと」FEC自給運動にも関心、メンマの製造・販売も

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年8月13日

島根県立大学名誉教授 田嶋 義介(第3129号 令和2年8月10日)

「最近、森に行きましたか?」この質問に「はい」と答えられる人を増やしたいと願い活動するのが「もりびと」です。自らの団体を紹介するHPの冒頭に、こんなユニークな問答を載せ、千葉県中央部の長南町を中心に森林整備保全活動をしている一般社団法人がある。FEC自給運動(食糧・Food、エネルギー・Energy、福祉・Careの自給運動)にも関心を寄せ、タケノコからメンマの製造・販売に乗り出している。

一般社団法人「もりびと」の設立は2014年9月。千葉美賀子代表理事(71)によると、2001年に千葉大園芸学部教授らが設立した地域活性化を支援するNPO「ふるさとネッツ」に誘われて参加。13年度に森林整備で出た丸太をボイラーで燃やし、温風や温水を園芸用ハウスなどの暖房に使う林野庁の委託事業「木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業」の募集があった。千葉大の先生とともに応募、採択された。森林整備に伴う労働災害への対応が必要になり、先々の事を考え、参加者に利益も還元できる一般社団法人を新たに設立した。事業は約3年間で6億円。地域の里山整備関係の人や里山に興味を持つ他地域の人達約40人でスタートした。

「もりびと」が事務所を置く長南町は町の約4割を山林・原野が占める。しかし、山は手入れされなくなり、竹林も増加中。千葉さんは長南町の商家出身。若い頃に、農家の人が野菜を持ってきて「これはうちの野菜だから、安心して食べて下さい」といわれ、「どういう意味ですか」と聞くと、「自分の家で食べる野菜には農薬を使っていないからだ」といわれ、農業、農薬問題を調べ始めた。山が荒れ、ゴミ捨て場になっていく姿を見るにつけ、「山のこともやっていこう」と思うようになった。

「もりびと」は森林の整備を請負、伐採した木や危険木を薪や丸太にして販売、山に親しむ里山体験教室を開催、大学生70人が参加、薪割り、ピザ焼きをした例もある。

FEC自給運動にも関心を持つ。経済評論家の内橋克人氏が食とエネルギー、福祉をできるだけ自給することが地域社会の自立と雇用の創出につながると提唱、東日本大震災を経て、広がっている。「もりびと」も事務所が昨秋の台風19号で川の水があふれ、周辺が水没、買い出しに行けなくなり、運動の必要性を痛感した。食糧の自給は厳しいが、竹炭を3㍈以下の粉末にし、乾麺に入れた竹炭うどんなどを販売、梅もぎなどのイベントを開催。メンマは房総半島の生鮮品、加工品を販売する「房の駅」にタケノコを納入、加工、販売してもらっている。ただ、福祉は専門的知識が必要で難しいと思っている。