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オンライン会議の可能性

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年5月18日

東洋大学国際学部国際地域学科教授 沼尾 波子(第3119号 令和2年5月18日)

新型コロナウィルス感染防止に向けて、不要不急の外出自粛が求められている。そこで、在宅勤務による業務を行うために導入されているのがオンライン会議システムである。ZoomやWebexなど、様々なソフトやアプリの導入により、事業所では自宅に居ながら打合せができる環境構築が進められている。

私の勤務する大学でも、オンライン授業が始まった。学生は自宅からPCやタブレットを用いて講義やゼミを受ける。ところが、これが続かない。対面授業であれば、どうにか90分間の講義を聴くことはできても、オンラインでは集中力は20分が限界のようである。

リアルな会議や講義であれば、参加者は現場の空気を感じながら、一瞬にして全体情報を把握できる。その場所で資料や板書を見ながら、話を順序だてて聞いていくことはそれほど苦痛ではないのだろう。

ところが、オンラインの場合、1つのモニター画面に、話者、参加者、資料等の情報が張り付けられ、配置される。参加者の顔を一度に見渡しながら場の空気を感じることもなく、資料一式に目を通しながら議論の全体像を確認することも難しい。画面に見えるのは、切り取られた映像や情報の一片であり、そのスクリーンショットが積み重なりながら、一秒一秒の時が刻まれる。それらの情報を受け取り続けながら、連続したストーリーを再構成する必要があるため、話を聞いている参加者は、疲れてしまうのかもしれない。

この分断された画面を繋ぎ、ストーリーを作るのは、様々な形の対話のようだ。

オンライン会議画面は、主に3つの部分から構成される。主画面には参加者の映像や、共有資料等が映し出され、その横に参加者リスト画面、チャット画面が並ぶ。

このチャット機能が面白い。主画面で誰かが話をしている横で、議事メモを記入したり、気になったことをつぶやいたりできる。いわば会議が中央で進行するすぐ横で、もうひとつのやり取り、つぶやきが文字情報として記録され、時系列で蓄積され、話者の横で流されていく。進行役の発話に対し、参加者全員が一斉にチャットで回答し、議論を重ねることもある。語りあい、チャットに書き込みあった会議や講義は盛り上がり、話が進む。

オンライン会議は、遠隔地に居る人も参加できるという強みも持つ。そう考えると、この新しい会議システムが自治体に導入されるとき、政策形成過程での会議や議論の形は、空間を超えた、双方向でリアルタイムなものへと変化する可能性がある。この新たな議論の場は、自治の形をフラットな対話型へと導いていくことに貢献するのかもしれない。