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日々の暮らしと国際社会

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月6日

福島大学教授 生源寺 眞一(第3115号 令和2年4月6日)

食品ロス削減推進法が施行されて半年が経過した。法律に基づく具体的な取組の骨格も見えてきた。年度末には国としての基本方針が定められ、今後は都道府県もロス削減の推進計画の策定に努めることになる。同じく努力義務ではあるものの、市町村にも計画の策定が期待されている。地方自治体の活動としては、普及啓発や優れた成果に対する表彰、フードバンクなどの未利用食品提供活動の支援などが想定されている。町村の役場にも判断が求められている。

食べられるのに廃棄された食品のロスを大別すると、家庭系の291万tと事業系(製造業・流通業・外食産業)の352万tからなる(2016年度)。1人当たり年間51kgといったデータをご存知の読者もおられるだろう。なかでも家庭系のロスは毎日の食生活に伴って生じる廃棄であり、誰もが自分自身や家族の問題として考えることのできるテーマでもある。

日々の暮らしと直結している食品ロスなのだが、同時に食品ロス削減推進法は国際社会の大きな流れを強く意識している。すなわち、前文では2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)に言及しつつ、世界に多数の栄養不足人口が存在する中で多くの食料を海外に依存する日本にとって、真摯に取り組むべき課題が食品ロスだと述べている。持続可能な開発目標に触れていると述べたが、具体的にはSDGsのターゲット12・3が「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」と宣言している。

単純な話ではない。この国の食品ロスの削減が直ちに途上国の栄養不足人口の減少に結びつくとも言いがたい。けれども、日々の暮らしが国際社会の動向ともつながっていることを明瞭に意識できる点で、食品ロスの問題は地域の人々の視野を広げる役割を果たすことにもなるであろう。