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域外資本は是か非か~急がれる「地域ルール」づくり~

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年1月13日

立教大学観光学部特任教授 (公財)日本交通公社上席客員研究員 梅川 智也 (第3105号 令和2年1月13日)

外国資本を含む宿泊施設に対する投資がバブル期を上回っているそうだ。政府一丸となった観光立国、観光先進国に向けた取組や昨年のラグビーワールドカップ、今年の東京オリンピック・パラリンピックの開催などによってわが国の知名度が向上し、安定した訪日外国人旅行者が将来的にも見込めると投資家が判断したことなどが背景にあると推察される。

バブルが弾けて30年あまり、この間、特に地方の観光地にはほとんど投資が入らなかったことを考えると隔世の感がある。無論、後継者難や施設の老朽化などによって廃業する旅館が増えているなど未だに投資が入らない地域もあり、現実にはまだら模様というのが実態であろう。

観光地において域外からの投資を呼び込むことは、観光客を迎え入れることと同様、いやむしろそれ以上に重要なポイントである。そうした考え方は日本ではほとんど語られないが、世界的にみればいわば常識ともなっている。常に新たな魅力を創出し、発信し続けることが、永続性のある観光地経営には欠かせない要諦であるからである。

ただ、野放図な域外資本の受け入れは、地域の混乱を招くだけで、如何に地域の意向、地域のルールに添った投資を誘導するかが大切である。長年にわたって地元関係者が作り上げてきた地域ブランドの安易なただ乗りが許されてはならず、既存の観光推進組織への参画や会費負担、地域活動への協力なども新規参入企業には求めていかねばならない。

かつてバブルの時代にリゾートマンションが乱立し、ゴミ処理や上下水道、消防施設など生活インフラの整備が追いつかないといった問題が発生した町があった。現在も北海道のスキーリゾートでは急速なコンドミニアム(分譲型ホテル)の開発が進められているところもある。不動産投資や域外投資が否定されるものではなく、急速な宿泊容量の増加にインフラ整備が追いつかないという開発のスピードが問題なのであり、当時はグロースコントロール(成長管理)という概念すらなかった。

まずは、域外資本の参入に対する地域としてのスタンスを明確にし、投資スピードの問題も含めて適切に受け入れるための「地域ルール」を確立すること、そしてできればそのルールを遂行する地域マネジメント組織の設立やその活動を担保する条例の制定などが期待されている。