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未来塾

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年4月1日

福島大学教授 生源寺 眞一(第3075号 平成31年4月1日)

時の経つのは早いもので、5月には地域農政未来塾が第4期生を迎える。塾は全国町村会の肝いりで運営されているから、ご存知の読者も多いと思う。月に一回、東京の町村会館で二日かけて行われる講義と演習が基本で、ゼミ単位で農村の現場を訪問し、特色のある取組に接する機会もある。締めくくりは研究論文の執筆で、年末年始の休日返上で頑張り抜く塾生も少なくない。

塾長を仰せつかっている立場上、「手前味噌だね」との反応を覚悟のうえで申し上げるならば、若手・中堅の職員が塾生として投じた貴重な時間と労力に対して、それを十分に上回る成果を手にされたに違いない。これが集大成としての研究論文を精読し終えたときの強い実感だった。仲間とともに学んだ新たな知見や発想法が具体的に実を結ぶ日も遠くないであろう。むろん、果実を手にするのは卒塾生だけではない。マンパワーの確保に苦労する中で、職員を送り出していただいた町や村に確かな見返りが届くこと、ここに未来塾のねらいがある。

教える側も教えられることが少なくない。ここにも塾の特徴がある。今回は私自身が改めて気づかされたことから、ひとつだけ申し上げておきたい。それは町村の役場の総合力であり、分野横断的な潜在力にほかならない。仕事の縦割りが徹底し、固定的な専門家集団からなる国の省庁と対比してみると分かりやすい。町村役場の職員には、財政を担当したのちに農政を担うケースなど、さまざまな領域を経験するケースが少なくない。塾生にも農政の未経験者が含まれている。そもそも異なる分野の職員とほとんど隣り合わせであるところに、役場の持ち味があると言ってよい。

分野横断的な経験と交流を活かすこと、この点に町村ならではの新たな発想の可能性がある。農政についても、領域を農業生産に限定することなく、従来とは異なる斬新なアイデアが生み出されてよい。それこそが「未来塾」の名称にふさわしい成果なのである。