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ちっちゃな村の大きな夢

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年3月25日

ジャーナリスト 松本 克夫(第3074号 平成31年3月25日)

日本の人口が増加から減少に転じた平成の30年間に、何と人口を倍増させた村がある。全国で面積が最小の富山県舟橋村である。15分も歩けば外に出てしまいそうな小さな村だが、昭和初期に同村の村長は、「舟橋村は日本のモナコになる」と宣言した。それ以来、山に囲まれた村でもないのに、昭和、平成と合併への圧力をはねのけてきた。

昭和45年の新都市計画法による線引きで全域が市街化調整区域に指定されてからは、住宅整備がままならず、一時は子どもの出生数の減少に悩まされた。しかし、昭和の最後に、長年の市街化調整区域からの除外運動が実った。直ちに宅地造成に動いた結果、村への転入者は急増し、平成の初めに1400人程度だった人口は3000人を突破した。

交流人口はもっと増えた。舟橋村には、富山地方鉄道の駅舎と併設したユニークな村立の図書館がある。天然記念物のニホンカモシカが入り込んだ騒動があってから、「カモシカとしょかん」の愛称で呼ばれている。子どもが楽しめる場とあって、村外の利用者も多い。貸出登録者数は人口の6倍もの1.9万人に達している。子育て支援センター「ぶらんこ」も、気軽に利用できることから、8割以上が村外の利用者である。村外向けのサービスが過ぎるような気もするが、金森勝雄村長は、外から人が集まると、村のビジネスや転入者の増加につながると歓迎している。

昨年、村は子どもたちの提案を入れた公園づくりや毎月の「月イチ園むすび」イベントが評価され、日本公園緑地協会主催の都市公園等コンクールで国土交通大臣賞を受賞した。

新旧住民の連帯感を高めるために作った村歌『ちっちゃな舟橋村』では、「ちっちゃなちっちゃな ちっちゃなちっちゃな ちっちゃなちっちゃな ちっちゃなちっちゃな 舟橋村」という小ささを楽しむかのようなフレーズが8回も繰り返される。その後に「大きな 大きな 大きな 夢もってゆこう」が続く。小さくとも独自の村づくりに誇りを持つ子どもたちが抱く夢は大きい。