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最高の米はここに来て味わって(湯川村「勝常地区新米祭り」)

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年3月11日

作新学院大学名誉教授 とちぎ協働デザインリーグ理事 橋立 達夫(第3073号 平成31年3月11日)

福島県湯川村は、会津盆地の中央、人口約三千二百人の村である。高低差が5m程度という平たんな地形で、広大な水田越しに望む会津磐梯山は雄大である。村の中心には、徳一上人により創建され、国宝薬師三尊像を有する千二百年の古刹、勝常寺がある。

その勝常寺の境内地に営まれる勝常集落で、東北電力まちづくり元気塾が開かれた。テーマは、まちづくり(住民の暮らし)と、農業振興の連携である。これまで地区内では、稲作農業を維持するために、男性中心に、米の価格をどう高めるか、農業後継者をどうやって確保するかという問題に取り組んできた。しかし、この問題をより広くまちづくりの問題として捉えるため、元気塾には女性たちの参加を呼び掛けた。これにより、地域の絆を強め暮らしを楽しくすること、そしてそれを地域外の人たちに分けてあげるという活動が、農業振興の課題解決にもつながると考える機運が生まれた。

3回のワークショップは最終回に「勝常地区新米祭り」として結実した。ワークショップの中で、地区ではこれまで春に豊作祈願の花祭りを行ってきたが収穫御礼のイベントがなかったこと、また、昔は祭りの際に親類縁者を招いておもてなしをする文化があったことなどの気付きがあった。これらを踏まえて、従来の村主催の新米祭りとは別に、新たに地区独自の新米祭りを行うことになったのである。

イベントは、台風余波の雨予報にもかかわらず好天に恵まれ、地区内参加者30名、地区外からの来訪者約100名の参加を得て行われた。地区内オリエンテーリング、地区自慢の新米を中心に女性たちの腕によりをかけての昼食提供、米と名物揚げ饅頭の販売、竹灯籠づくり、トラクター試乗体験など、来場者はもちろん、地区の方々にとっても楽しめるイベントになった。この取組には、勝常寺も異例の季節外の薬師如来御開帳で応じて下さり、地区の象徴であるお寺とともに今後のまちづくりを進める第一歩になった。イベントの反省会では、ほぼ全員から今後も続けて行きたいという感想が出た。

ワークショップでは、勝常寺参道の景観整備、既存のよろず屋の地域共同店化など今後の活動目標も見えており、将来が楽しみである。