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信州木島平村の農への期待

印刷用ページを表示する 掲載日:2009年5月11日

早稲田大学教授 宮口 侗廸  (第2678号・平成21年5月11日)

木島平村(きじまだいらむら)は長野県の北東部、千曲川の右岸にある。ほぼ100平方キロの村に5,000人あまりが暮らす。「みすず刈る信濃」のみすずとはササのことであり、これとソバをあわせ考えれば、信州という言葉からおいしい米を連想する人はあまりいないであろう。しかしこの村は、千曲川の2つの支流がつくった豊かな扇状地の上に落ち着いた農村風景が広がり、本当においしい米が実る。

スキー場観光が衰退する中、木島平村は昨年度夏に、村当局や観光協会、商工会、農協など9団体の参加によって農村交流型産業推進協議会を設立し、農のワザを基軸とした産業の育成のための本格的な活動を開始した。農村空間の魅力を活かし、農業の高付加価値化を図ると共に、農村体験を含むツーリズムを振興し、さらにインターネットによって交流人口を拡大し、地域ブランドを確立しようというものである。

昨年度後半だけでも、意識啓発のための「ふるさといきいきフォーラム」、「農村ビジネスフォーラム」、「木島平米食味コンクール」などを矢継ぎ早に開催し、さらに育成したソバ打ちグループの連携によって、雄山火口(おやまぼくち)というヤマゴボウに似た作物をつなぎに使う地元産ソバを、「名水火口(ぼくち)そば」と名づけてソバのブランド化にも打って出た。これにはそば打ち名人5段の板倉長野県副知事も貢献している。農村そのものの本質的な価値を高めて世の中にチャレンジする姿勢は本当にすばらしい。

昨秋講演に呼んでいただいた折、ふるさとを思う情熱と気合いあふれる芳川村長と、総務省から出向している若き戸梶副村長のいい関係が、この敏速な展開の力の元になっていることを実感した。特に戸梶副村長は、農村の生き様に感動しながらも、その高い事務能力で、しくみづくりに大きな貢献をされている。今年度は地元の下高井農林高校および早稲田大学との連携からさらなる展開を図ることがすでに予定されており、この連休明けの会議には筆者のゼミ生も参加した。小さな村の農を基軸とする協働パワーの成長に大いに期待したい。