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まちづくりの起爆剤としてのワークショップ

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年10月29日

作新学院大学名誉教授 とちぎ協働デザインリーグ理事 橋立 達夫(第3059号  平成30年10月29日)

まちづくりの現場でワークショップ型会議が広く普及してきた。従来行われてきた行政主導型の会議、声の大きい人だけが意見を述べるような会議に代わり、参加者全員が意見を出し、それをまた皆で聴き、案を練り上げていくという会議の方法は、民主的な合意形成の手法として定着している。


このワークショップ型の会議については次のような批判もある。住民に迎合するポピュリズムの手法であり、行政はプロとしての自信をもって、事業を進めるべきではないか。あるいは逆に、住民に仕事を押し付けているのではないかという批判である。またワークショップのメンバーは、たとえ行政から依頼を受けたとしても、住民から地域の将来を決める権限を付託されたわけではないという批判もある。

しかしワークショップ型会議には、それらの批判を考慮してもなお余りある利点がある。それはまちづくりの起爆剤になる共感と感動を生む機会になっているという点である。

住民自身が地域の問題点や有形無形の資源を洗い出すところからワークショップが始まる。それらを踏まえて地域の課題を明らかにし、地域の将来のまちづくりの方向を考えるという場は、地域にとって必須である。まちづくりの計画として最良の計画は、地域の住民の共感を得ることができる計画である。そしてワークショップ型の会議は、まさに地域住民の間で共感を醸成する過程そのものである。

さらにワークショップでは、まちづくりの方針やなすべき事業が定められると同時に、その過程で、地域の将来を担う主体としての参加者の意識が高まり、事業実施に向けて個々の住民がやるべきこと、できることが見えてくるのである。そして自分が提案した事業案が採択され、実現し、その成果を見るという流れの中で、個人として、また仲間としての感動が生まれる。

地域は巨大な慣性力を持っており、外からの力で動きの方向や速度を変えるのは容易ではない。しかし、ワークショップによって生まれる感動と共感が、地域の動きを中から変える力を引き出す起爆剤となるのである。